
こんにちは、ロジカル・アーツの眞泉です。
Tシステムの進化に伴い、企業のIT運用はますます複雑化しています。 クラウドの普及、マイクロサービスの導入、DevOpsの進展などにより、システムの構造はより分散化し、従来の監視ツールだけでは対応が困難になってきています。 特に、日本企業ではITエンジニア不足やレガシーシステムの存在もあり、効率的で安定したシステム運用が求められています。
こうした状況の中で注目を集めているのが「オブザーバビリティ」です。 オブザーバビリティは、システム全体の状態を可視化し、リアルタイムで異常を検知することを可能にする概念であり、IT運用の効率化や障害対応の迅速化を実現する重要な手法です。
2024年1月「注目のオブザーバビリティを理解するための3つのポイント」の記事でもオブザーバービリティーについて解説しています。
本記事では、さらに深く掘り下げてオブザーバビリティの具体的な活用方法について解説します。 IT運用の複雑化による課題を整理したうえで、システムの安定稼働を支えるために、オブザーバビリティがどのように役立つのかを探っていきましょう。
- 1. IT運用の複雑化とその課題
- 2. オブザーバビリティの基本とその重要性
- 3. オブザーバビリティの導入方法と実践的アプローチ
- 4. Q&A – オブザーバビリティに関するよくある質問
- 5. まとめ – IT運用の複雑化に対応するために
1. IT運用の複雑化とその課題
ITシステムの進化に伴い、企業のIT運用はかつてないほど複雑になっています。 従来の単一サーバー管理から、クラウド環境やコンテナ、マイクロサービスなど、多様な技術が組み合わさるようになり、システム全体の監視や運用が困難になってきました。 本章では、IT運用がどのように複雑化しているのか、そしてその結果として生じる課題について詳しく見ていきます。
1-1. IT環境の進化とシステムの多様化 現在、多くの企業がクラウドサービスを活用し、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境や、複数のクラウドを利用するマルチクラウド環境を採用しています。 また、アプリケーションの開発・運用手法も、モノリシックな構造からマイクロサービスアーキテクチャへと移行し、システム全体がより分散化しています。 こうした技術の進化により、従来の監視手法では全体の可視性を確保することが難しくなってきています。
1-2. 従来の監視手法の限界 従来の監視は、サーバーやネットワーク機器の稼働状況をチェックし、CPU使用率やメモリ使用量、ディスク容量などの指標を基にシステムの状態を把握するものでした。 しかし、システムが分散化・複雑化するにつれ、個々のコンポーネントの監視だけでは問題の根本原因を特定するのが難しくなっています。 例えば、あるマイクロサービスが遅延を引き起こした場合、その影響がどこに及んでいるのかを即座に把握することは、従来の監視では困難です。
1-3. IT運用におけるトラブルの増加と対応の難しさ システムが複雑化することで、トラブルの発生頻度も増加しています。 特に、サービスがクラウドやマイクロサービスを活用している場合、障害が発生した際に、どの部分に問題があるのかを迅速に特定するのが難しくなります。 また、手作業による障害対応では、根本原因の特定に時間がかかり、ダウンタイムの長期化やサービス品質の低下を招く可能性があります。 こうした課題を解決するために、従来の監視を超えたアプローチとして、オブザーバビリティの概念が注目されています。
次の章では、この「オブザーバビリティ」とは何か、従来の監視との違いや、その重要性について説明します。
2. オブザーバビリティの基本とその重要性
IT運用の複雑化に伴い、従来の監視手法では十分な可視性を確保できなくなっています。 そこで注目されているのが「オブザーバビリティ」です。 オブザーバビリティは、システムの状態を深く理解し、リアルタイムで異常を検知・分析するための概念です。 ここでは、オブザーバビリティの基本的な定義や監視との違い、IT運用における重要性について説明します。
2-1. オブザーバビリティとは何か? オブザーバビリティ(Observability)とは、システムの内部状態を外部から観測可能にし、リアルタイムで異常を検知・分析できる能力を指します。 従来の監視では、あらかじめ設定した指標(メトリクス)の異常を検出することが主な目的でしたが、オブザーバビリティは「未知の問題」にも対応できる点が特徴です。
オブザーバビリティの基本要素として、以下の3つが挙げられます。
- メトリクス(Metrics):CPU使用率やリクエスト数などの定量データ
- ログ(Logs):システムの動作記録やエラーメッセージ
- トレース(Traces):リクエストの流れを可視化し、どこで遅延や障害が発生しているかを特定
これらを総合的に活用することで、システム全体の挙動を把握し、迅速な問題解決が可能になります。
2-2. 監視との違いと相互補完関係 従来の監視(Monitoring)とオブザーバビリティには明確な違いがあります。 監視は、あらかじめ設定した閾値を基に異常を検出する手法ですが、オブザーバビリティはシステムの内部状態を深く観察し、未知の問題にも対応できるようにすることです。

つまり、オブザーバビリティは監視を補完し、より高度な問題分析を可能にする手法なのです。
2-3. オブザーバビリティがもたらすIT運用の変化 オブザーバビリティの導入により、IT運用には以下のようなメリットがもたらされます。
- 障害対応の迅速化:リアルタイムのデータ分析により、問題の根本原因を素早く特定
- システムの安定性向上:継続的な監視と分析により、潜在的なリスクを事前に検知
- 運用コストの削減:自動化と高度な分析により、人的リソースの負担を軽減
従来の監視手法にオブザーバビリティを組み合わせることで、より効率的なIT運用を実現できます。 次の章では、オブザーバビリティの導入方法と実際の活用事例について詳しく説明します。
3. オブザーバビリティの導入方法と実践的アプローチ
オブザーバビリティを実現するためには、適切なツールを選定し、段階的に導入を進めることが重要です。 ここでは、WhaTapを活用したオブザーバビリティの導入方法と実践的なアプローチについて紹介します。
3-1.WhaTapを活用したオブザーバビリティ導入のステップ
1.監視対象の特定と導入計画の策定 まず、オブザーバビリティを強化したい領域を特定します。たとえば、以下のような課題がある場合、WhaTapが有効です。
- アプリケーションの応答速度が低下する原因が分からない
- サーバーリソースの異常な消費が発生している
- マイクロサービス間の通信遅延がシステム全体に影響を与えている
この段階で、WhaTapの無料トライアルを活用し、実際のシステムに適用した際の効果を確認するのもおすすめです。
2. WhaTapの導入とデータ収集 WhaTapは、エージェント型の監視ツールであり、簡単に導入できます。基本的な導入プロセスは以下のとおりです。
1. エージェントのインストール
2. リアルタイム監視の有効化
3. 分散トレーシングの活用
3-2. 実践的なアプローチ:WhaTapを活用した効果的な監視 オブザーバビリティの導入は、一度設定すれば終わりではありません。 WhaTapの高度な機能を活用し、継続的な監視と改善を行うことが重要です。
1. AIベースの異常検知で未然にトラブルを防ぐ WhaTapのAI監視機能を活用すれば、異常値を自動検知し、問題が発生する前にアラートを受け取ることができます。 たとえば、CPU使用率が通常よりも急激に増加した場合、自動で警告を発するといった設定が可能です。
2. ダッシュボードを活用してリアルタイムで状況を把握 WhaTapのカスタマイズ可能なダッシュボードを活用し、システムの重要なKPI(応答時間、エラーレート、スループットなど)を一目で把握できます。 これにより、トラブル発生時の迅速な対応が可能になります。
3. ログ分析と連携し、根本原因を迅速に特定 WhaTapは、詳細なログデータと連携できるため、特定のエラーや遅延の原因をログレベルで分析できます。 たとえば、データベースのクエリ遅延が原因でアプリケーションの応答速度が低下している場合、WhaTapのログ分析機能を活用することで即座に問題を特定できます。
3-3. WhaTapによるオブザーバビリティ導入の成功事例 多くの企業が、WhaTapを導入することでIT運用の効率化を実現しています。 たとえば、あるECサイト運営会社では、以下のような効果が得られました。
- 導入前の課題: ピーク時にサーバーが高負荷となり、サイトのレスポンスが大幅に低下
- WhaTap導入後の効果: エージェント導入後、トラフィック急増時のボトルネックを特定し、適切なリソース配分を実施 → サイトの安定稼働を実現
このように、WhaTapを活用することで、オブザーバビリティを強化し、IT運用の効率を大幅に向上させることが可能です。
4. Q&A – オブザーバビリティに関するよくある質問
オブザーバビリティを導入するにあたり、多くの企業が抱える疑問や課題について、よくある質問とその回答を紹介します。
4-1. オブザーバビリティと従来の監視ツールの違いは何ですか?
Q: これまでの監視ツールとオブザーバビリティの違いを教えてください。
A: 従来の監視ツールは、システムの特定の指標(CPU使用率、メモリ使用量、ログエラーなど)を監視するのが主な目的でした。一方で、オブザーバビリティは「システムの内部状態を深く理解する」ことを目的としており、メトリクス・ログ・トレースの3つの要素を組み合わせて、問題の根本原因を素早く特定できます。
4-2. オブザーバビリティ導入にはどれくらいのコストがかかりますか?
Q: オブザーバビリティを導入する際のコストはどの程度ですか?
A: コストは導入するツールやシステムの規模によって異なりますが、クラウドベースのSaaS型ツール(例:WhaTap)を活用すれば、初期投資を抑えながらスモールスタートが可能です。 また、オープンソースのソリューション(Prometheus、Jaeger、ELK Stack など)を活用すれば、ライセンス費用を抑えることもできます。 ただし、運用や管理にかかる人的コストも考慮する必要があります。
4-3. どの業界にオブザーバビリティが必要ですか?
Q: どのような業界や企業にオブザーバビリティは適していますか?
A: IT運用が重要なすべての業界で活用できます。特に以下の業界では導入が進んでいます。
- EC・小売業: 高トラフィック時のパフォーマンス維持
- SaaS・クラウドサービス: マイクロサービスの可視化と最適化
- 金融業界: セキュリティ監視とインシデント対応の迅速化
- ゲーム業界: ユーザーエクスペリエンス向上のためのリアルタイム監視
- 製造業(IoT): 生産設備の異常検知
4-4. オブザーバビリティ導入のための第一歩は?
Q: すぐにオブザーバビリティを導入するには、何から始めればいいですか?
A: まずは以下の3ステップで進めるとスムーズです。
- 現状の課題を整理する: 監視のどの部分が不足しているかを特定
- 適切なツールを選定する: WhaTap や Prometheus、OpenTelemetry などを比較検討
- 小規模な導入から始める: 一部のシステムや特定のメトリクスから試験的に導入し、徐々に範囲を拡大
4-5. 監視ツールとオブザーバビリティツールを併用できますか?
Q: すでに監視ツール(Nagios、Zabbix など)を導入していますが、オブザーバビリティツールと併用できますか?
A: はい、可能です。監視ツールはシステムの健全性を確認するのに役立ちますが、オブザーバビリティツールはシステム内部の詳細な挙動を分析するためのものです。 既存の監視ツールに加え、オブザーバビリティツールを導入することで、障害の根本原因をより早く特定し、効率的なトラブルシューティングが可能になります。
オブザーバビリティの理解が深まることで、IT運用の効率化やトラブル対応の迅速化が実現できます。 次章では、この記事のポイントを振り返り、まとめます。
5. まとめ – IT運用の複雑化に対応するために
この記事では、IT運用の複雑化に対応するために、オブザーバビリティの重要性や導入メリットについて解説しました。 ここで、主要なポイントを振り返ります。
5-1. オブザーバビリティの重要性
- IT環境がマイクロサービス化し、システムの複雑性が増している
- 従来の監視ツールでは対応が難しく、障害の根本原因特定に時間がかかる
- オブザーバビリティを活用することで、リアルタイムでシステム全体を可視化し、迅速な対応が可能
5-2. オブザーバビリティ導入のメリット
- 障害対応の迅速化: 問題の根本原因を特定し、ダウンタイムを短縮
- パフォーマンスの最適化: システム全体の挙動を分析し、ボトルネックを解消
- 運用負担の軽減: システム管理者の負担を減らし、効率的なIT運用を実現
5-3. 効率的な導入方法
オブザーバビリティを導入する際は、以下のステップを意識するとスムーズに進められます。
- 現在の課題を洗い出す – 監視が不十分な領域を明確にする
- 適切なツールを選定する– WhaTapなどのSaaS型ツールを活用し、スモールスタートで試す
- 小規模導入から拡張する – 最初は特定のシステムや重要なメトリクスの監視から始め、段階的に拡大
5-4. WhaTapでオブザーバビリティを実現
WhaTapは、リアルタイム監視と高度な分析機能を兼ね備えたオブザーバビリティプラットフォームです。
導入が容易で、スモールスタートにも適しているため、多くの企業が採用しています。
IT運用の複雑化が進む中で、オブザーバビリティはもはや必須の技術です。
適切なツールを導入し、より効率的で安定したシステム運用を目指しましょう。
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